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【病気の解説】「ピロリ菌」ってなに?胃の中に住みつく、ちょっと厄介な小さなお客さん【ピロリ菌の解説】

「あなたの胃にはピロリ菌がいます」って言われたけど、ピロリ菌ってどういう病気?

「ピロリ菌がいると言われました」「除菌をすすめられたけど、どうしよう…」そんな話を聞いたことがある方も多いと思います。正式には「ヘリコバクター・ピロリ」といって、胃の中に住みつく小さな細菌のことです。

実はこのピロリ菌、胃の粘膜に慢性的な炎症を起こし、「慢性胃炎(ピロリ感染胃炎)」という状態をつくってしまうことがあります。炎症が長く続くと、胃の粘膜が弱ってきて、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、そして将来的には胃がんのリスクも高まることがわかっています。

感染の多くは子どもの頃、井戸水や家庭内感染などを通じてうつったと考えられています。特に40代以上の日本人では、感染している人が比較的多いといわれています。

ピロリ菌と言われたらどうしたらいいの?

でもご安心を。ピロリ菌は「除菌(じょきん)」といって、飲み薬(抗生物質など)を1週間ほど飲むことで、多くの方が退治できます。除菌に成功すると、胃の炎症がだんだんおさまり、潰瘍やがんのリスクもグッと下がることがわかっています。

症状がなくても、ピロリ菌に感染しているだけで胃の中ではじわじわ炎症が進んでいることがあります。「痛くないから大丈夫」ではなく、「今のうちに見つかってラッキーだった」と思っていただくのがよいかもしれません。

検査方法もとても簡単で、呼気(はいた息)や尿、血液、便などで調べることができます。内視鏡検査の際に一緒に調べることもあります。

大切なのは、「自分の胃を知ること」。そして、必要があればきちんと除菌して、定期的に胃の状態を見ていくこと。ピロリ菌は、私たちの知らないところで静かに胃にダメージを与える存在ですが、今の医療ではしっかり対策ができます。

不安なことがあれば、遠慮なくご相談くださいね。胃は、あなたの毎日の元気を支える大切なパートナーです。一緒に、胃を大事にしていきましょう。

【参考資料:日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会編:H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版.先端 医学社,東京,2016】